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2012/05/07 16:52
ほら、あの木のてっぺんに、こねこのミーナがすわっています。
まっしろい毛が きらきらとひかっています。
ミーナは みずうみをみています。
あおく ふかい みずうみです。
みずうみのまんなかあたりに、ゴンドラがちいさくみえました。
ミーナは さっきから、にじのことを かんがえているのです。
「ねえ、にじにさわったら どんなかんじがするのかなー?」
でも、もちろん、へんじはきこえません。
ミーナが もっとじょうずに にじのことを おもいうかべようとしたとき、
コマドリがとんできて、えだのさきに とまりました。
「おやおや、なにをいったい、かんがえこんでいるの?」と、コマドリ。
「にじにさわったこと、ある?」
「ありますとも、ありますとも」と、コマドリは むねをはりました。
「どんなかんじなの?」
「ふるえるように やさしいの。あたしのうたみたいにね」
ミーナは やさしいにじを おもいうかべました。
そのあいだに、コマドリは とんでいってしまいました。
ゴンドラが スーッと よこへ すべっていきました。
ミーナが いっしょうけんめいに、コマドリのうたのことを かんがえていると、
ざわざわと風がふいて 空がくらくなりました。
おおつぶのあめが パラパラとおちはじめました。
あめつぶが 1つ、ミーナのはなのあたまに のっかりました。
「なにを、むずかしいかお してるの?」
あめつぶが たずねました。
「にじにさわったこと、ある?」
「そりゃあ、もう!」
「どんなかんじがするの?」
「かんぜんに すきとおっているのさ。ぼくみたいに」
ミーナは すきとおったにじを おもいうかべました。
そのあいだに、あめつぶは ミーナのはなから、
スルリとおちて いってしまいました。
ゴンドラは こんどは はんたいのほうへすすみました。
いつのまにか あめはやんで、
たかい空を くもがはやあしで、きそいあうように とんでいきます。
そのくもの ひとひらが、ミーナのみみに ささやきました。
「かんがえごとかね?」
「にじにさわったこと、ある?」
「あるのないのって!」
「どんなかんじがするの?」
「うっとりするほど かろやかなかんじさ。わたしをみてごらん」
ミーナは かろやかなにじを おもいうかべました。
そのあいだに、くもは 風にのって とんでいきました。
ゴンドラは こちらへ むかってくるようでした。
ミーナは、コマドリのやさしいうたと、すきとおったあめつぶと、かろやかなくもを、
もういちど、かわるがわる かんがえて、
さいごに、にじを おもいうかべました。
「さっぱり、わからない」
ミーナは かんがえるのをやめて、木をおりました。
みずうみの きしにすわると、
ゴンドラは ちょうど ミーナのいるところに、カタンと へさきをつけたところでした。
あかいゴンドラから 手をふっているのは、くろねこのロングウエイです。
「やあ、ミーナ、なにしてるの?」
「にじを おもいうかべてたの。でも、つかれちゃった。
そのゴンドラ どうしたの?」
「つくったんだよ。水にうかべてみたのさ」
そのときです。また、きゅうに、空が くらくなりました。
こまかい雨が さーさーと ふりはじめました。
「おやおや、またかい。きょうは よくふるな。
ミーナ、ゴンドラにのせてあげるよ。さあ、おいで」
ロングウエイは 手をのばして、ひょいと ミーナをゴンドラにのせました。
雨のなかを、ロングウエイが ゆったりと オールをうごかしました。
ぎっこん ぎっこんと、音がしました。
ゴンドラは ゆらりゆらり、ふかいみずうみのまんなかへ むかいました。
オールをうごかしながら ロングウエイは、
ゴンドラのつくりかたを はなしてくれました。
ミーナは にわにさいた タンポポのはなしをしました。
「ゴンドラもタンポポも たいしたものさ」
と、ロングウエイは おしまいに いいました。
みずうみのまんなかへ くると、ロングウエイは、
「ちょっと、ひとやすみだ」と、いって ひげをひねると、よこになって ねむりました。
ミーナは ゴンドラのへりから、みずうみの こまかい波を みつめました。
あめが さーさー ふりました。
ロングウエイは 「やれやれ」と いって おきあがると、あくびをしました。
すると、あめが やみました。
空がさーっと あかるくなって、おひさまが うたをうたいはじめます。
ラン ララララン。きんいろのひかりが あふれかえります。
「ミーナ、ちょっと、目をつむって、10かぞえてごらん」
ミーナは 目をつむりました。
「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10!」
「よーし、いいぞ。うえをみあげてごらん」
ミーナが 空をみあげると、ゴンドラのうえたかく にじがかかっていました。
「わぁー! きれいだねぇ」
「きょうのは かくべつさ」
「まほうなの?」
「ちょっとした けいけんとコツだよ」
「にじにさわったこと、ある?」
「あるよ、もちろん」
「どんなかんじがするのかな?」
「じぶんで ためしてみなくちゃ わからないよ。
ためしてみるかね?」
「へぇーっ?」
ロングウエイは ちいさなはしごを とりだしました。
そのはしごを ゴンドラのまんなかに トンと たてると、
ピューッ!
くちぶえをならしました。
すると・・・はしごの のびること のびること。
スルスル ぐんぐん うえへのぼっていきます。
とうとう、サランと かるい音がして、にじのやまに ひっかかりました。
「そーら、のぼってごらん」
「たかいなぁ・・・」
「にじにさわれるよ」
ミーナは はしごをしっかりと つかみました。
なんて たかいんでしょう。まるで 空にすいこまれるようです。
ミーナは いきおいよく ひょーいひょーいと のぼりはじめました。
のぼりながら うたをうたいました。
・・・にじは やさしい
にじは すきとおる
にじは かろやか
ラララン ルルルン トゥルトゥルトゥルン!・・・
うたっているあいだに てっぺんまできました。
めのまえに にじがあります。
ミーナは にじに 手をのばしました。
いきをひそめて、そーっと・・・
あれ?おかしいな?
にじは どこー?
まるで なんにもないみたい。
みえるのに なんにもない。
「ねぇ、どうしてなの?」と、ミーナは にじに ききました。
でも、へんじはありません。
すこし かんがえてから、「あたし、目をつむることにしよう」と、にじに いいました。
ミーナは 目をつむりました。
こんどは、どうかなー?
すると ひょいと にじにまたがることができました。
ミーナは りょうてで にじを だきしめました。
にじは とーっても あたたかく・・・
みみもとで キンコン キンコン おとをたてていました。
はなさきに ふわりと いいかおりが ただよいました。
それは 7色のかおりでした。
「よく おぼえておいて」と、むらさきいろが ささやきました。
「わたしのかおりは よぞらのねむり」
「そして わたしのかおりは うみのなみだ」あおが いいました。
「もりのといきを わすれないで」と、いったのは みどりいろです。
「くさはらのうたは おすき?」と、きみどりが たずねれば、
「ほしのささやきを しっているでしょう?」と、きいろ。
「もちろん、ゆうやけのゆめもね」これは、オレンジです。
「わたしのかおりを しってる?」
あかが こうたずねたので、ミーナは
「おひさまのほほえみ?」
「そう、みんな よーくしってるわ」
それから、にじは しずまりかえりました。
ミーナは もういちど しっかりと にじを だきしめました。
「にじに さわったよー!」
ミーナは ゆっくりと にじからおりました。
目をあけて パチパチさせました。
もういちど しっかりと はしごをつかむと、
ひらり ひらり おりていきました。
ロングウエイが こちらをみあげて、まっていました。
「にじにさわったかい?」
「うん、さわった」
「どんなかんじだったかい?」
「うん、にじはねー、ふしぎなかおりがしてね、
おはなしもしたよ」
ミーナは クスクス わらいました。
ロングウエイは ひげを ピンと はじきました。
それから、ふたりは ゴンドラにねそべって、ひとねむりしました。
だんだん だんだん、にじが うすらいでいきました。
すっかり きえてしまうと、
はしごが スルスルと ちぢんで、
ゴンドラのなかに カタンとたおれました。
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